本研究は、オーストラリア連邦政府において2008年1月に実現した、自由党から労働党への政権交代が、先住民教育政策に及ぼした影響を分析することを目的としてきた。1970年代に連邦政府主導の先住民教育政策が開始されて以来、労働党が政権を獲得するたびに、大きな変革がもたらされた。今回も、「格差是正」政策の一環として、先住民生徒の教育成果の向上が、これまで以上に強調されてきた。また、教育を受ける側としての先住民という位置づけが自明視されてきたが、労働党政権下での教育政策では、先住民もまた教育成果の向上に責任を有する立場としての教育提供者側との「対等」なパートナーシップを構築するシステムが提案されてきた。現在のところ、劇的な先住民の学力向上は見られないが、先住民自身の学校教育への意識は着実に変化している。
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