本研究の目的は、高校教育の機会に焦点をあて、教育機会提供の構造とその提供の構造がいかにして成立し、存続しているのかを明らかにすることである。提供構造を把握するため本研究課題が注目するのは、機会の提供主体、すなわち公立/私立の別である。そのため、「学校基本調査」等の官庁統計を用いた量的分析と地方自治体レベルの高校教育政策に関する資料の分析を行った。 平成24年度には、3年間の研究の集大成として報告書をまとめた。この報告書にはこれまでに行ってきた量的データを用いた分析結果と、各地域の高校政策や高校に関する定性的なデータを用いた特徴的な自治体のケーススタディ、そして生徒減少期を迎えた現在、高校教育機会にどのような変化が生じつつあるのかについて論じた章を収録した。得られた知見は以下の通りである。1.量的データの分析結果から、各都道府県の提供構造を4つのクラスターに分けられることが明らかになった。2.この分類の結果を受けて、各類型の特徴的な自治体について政策面からの検討を行った。最も高校生人口が増える時期にどのように高校教育機会を提供してきたのかに自治体による違いが見られ、この温度差が各地域の高校教育の供給のあり方を規定することになったことが明らかになった。3.生徒減少期における高校教育機会の提供構造の変化については、1.高校の私学率が各自治体の公立高校政策や人口密度といった要因によって規定される度合いが近年高まっていることが量的データの分析から示された。また、2.自治体によって生徒減少期に公私バランスをどうしていくかの対応には違いがあり、その違いによって公立高校の教育機会から経済的に厳しい層が締め出されるような状況が生じつつあったり、私立高校に残された限られたパイをめぐって生き残り競争が激しくなったりする状況が生じつつある可能性が示唆された。
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