本研究は、移民研究の成果を教育現場で活かす方策のひとつとして、外国にルーツをもつ生徒の歴史的、文化的背景を日本の一般生徒に紹介する移民学習プログラムの構築を目的としている。具体的には、ブラジルに渡った日本人移民に関する「移民スゴロク」の制作に焦点を定め、公教育の現場で活用する計画を立てた。以上の研究目的を達成するために、2010年度においては、移民に関する学習教材開発について沖縄、広島、ブラジルで調査した。沖縄においては、すでに「沖縄移民」という学習教材がNPO法人によって作られ、出前授業などで活用されている。現在は、2011年10月に開催予定の「第5回世界ウチナーンチュ大会」にむけて移民学習について新たな取り組みが始まっていることがわかった。広島では、ハワイ移民史に関する教材はあるものの、ブラジル移民に関する教材は見当たらなかった。次年度も、沖縄、広島でブラジルとの繋がりに関する調査を実施する予定である。また、ブラジルでは、研究代表者は、サンパウロのブラジル日本移民史料館において移民教材の素材となりうる資料を調査した。研究分担者は、ブラジルの3州(サンパウロ・パラナ・南リオグランデ)で調査を行った。南リオグランデではドイツ系移民に関してスゴロクのほかバイリンガル読本が作成されていた。パラナでは州内の移民史読本、および公立図書館には新聞の切り抜き記事のファイル帳が整備されていることを確認した。また、サンパウロではスゴロクに使用する写真を撮影するとともに関連資料を収集した。初年度のもう一つの具体的な計画として、移民スゴロクの試作版の作成があった。業者に委託し試作版「移民すごろくブラジル版」を制作した。2011年度には浜松、鶴見(横浜)などの公立学校で実験的に利用してもらい、現場教師と生徒からのフィードバックをもとに改訂を重ねていく予定である。
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