本研究では、カナダ・オンタリオ州の中等教育と大学との接続関係を調査、分析することにより、日本の大学入学のあり方を再考し、大学全入といわれる時代の高校と大学の接続について提言することが目的である。オンタリオ州では、大学入学試験はなく、大学への進学は、中等学校において大学進学コースで大学進学のために条件とされている科目を履修し、その成績も定められた基準を満たさなければならない。すなわち、大学進学は中等学校での履修状況に左右される。中等学校卒業後の進路選択は、本人の意志、家族の希望のほか、学校のカウンセラーの助言が重要な情報源となって決定されるが、大学入学後の専攻変更は頻繁に行われる。また、中等学校卒業時に大学進学を希望しない場合であっても、職業経験を経て、大学への進学を実現することが可能である。さらに、経済的、社会的に大学進学から排除されがちなリスク生徒に対しても、大学進学の可能性をひらき、実現に向けて支援する仕組みが構築されつつあり、出身背景に影響されない大学進学の途が整備されつつある。このような高大接続のあり方は、大学入学試験や、それに関連した出身背景に影響される現代の日本に関して、中等学校と大学での学びを接続し、変更や修正を可能にする高大接続の可能性を示唆している。
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