研究概要 |
本年度は研究の第一年度であるため,学習開発の基盤となる理論の検討と,学習指導の具体化に向けて役立つと考えられるデータ・知見の収集・検討を中心に研究を行った。 まず,理論的な研究として,情報通信メディアにおけるコミュニケーションに関する先行研究を検討・整理した。さまざまなネットワーク・サービスにおける情報編集・提示のシステム特性,また,そうしたシステムが媒介するネットワーク参与者間の相互作用,さらに,それに参与する個人の社会行動・意識などに関する研究成果を踏まえて,国語科における「伝え合う力」としてのコミュニケーション能力を,情報通信メディアにおけるコミュニケーションに関係づけ,指導すべきその内実を構造化するための枠組みを構想した。 また,ここでのコミュニケーション能力に関連する問題として,メディアにおけるコミュニケーションに参与する構えの問題,また,参与者が通信する情報の編集・構成能力の問題を考えておく必要がある。そこで前者については,情報倫理・モラル教育に関する文献からその内容を把握した。また,社会科におけるネット・コミュニケーションに関する学習開発に参加する機会を得たので,そこでの議論や模擬授業の結果から,情報通信メディアの特質とその参与者との関係性の理解を踏まえた国語科における学習設計の視点を見出した。後者については,書くことの領域における学習内容をメディア・リテラシーの視点からとらえなおし,学習内容としての情報の編集・構成能力を系統的に構造化した。 さらに,以上の検討・考察を踏まえて,次年度以降での有効な学習開発の見通しをもつため,ネットワーク上のコミュニケーションを円滑にすることが動機づけられた学習を,大学生を対象に展開し,そこでのネットワーク,対面での談話データを収集した。
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