研究概要 |
本研究は,情報システムの学習について,実践的・体験的かつ,コンピテンシーとしてのシステム思考を形成するための学習指導を構築するために,次の点を具体的に明らかにすることとしている。(1)システム思考の構成概念とその構造,(2)システム思考の形成過程,(3)システム思考を形成する開発題材(学習内容,開発教材,展開,指導方法)の評価。具体的には,現行の学習指導要領の内容をミニマムとして捉え,システム思考の形成という観点から,ロボット制御教材の開発と学習のフレームワーク(教材を用いた一連の学習のまとまり:題材)の開発を行った上で,創造的問題解決学習の授業実践と評価を行うこととしている。 本年度は,「システム思考の構成概念の分析から測定尺度の作成,及びロボット制御教材・題材の開発」(具体的目的)をテーマに,中学生を対象としたシステム思考を測定する尺度構成と,ロボット制御教材・題材の開発及び試行授業を行った。このうち,システム思考の構成概念を検討するための尺度構成(目的の(1)と(2))では,テキストマイニングを活用したシステム思考の構成概念の分析から,尺度の原案を作成した。また,研究協力校とともに行っているロボット制御教材・題材の開発では,研究協力校において「Arduino(アルドゥイーノ)を活用した歩行型ロボット教材の開発」,「自動灌水器」の題材開発が行われた。なお,いずれの協力校においても,試行的な授業実践も行っている(目的の(3))。本年度の研究推進により,(1)学習者のシステム思考を把握する道筋がついたこと,(2)問題解決的な学習を通してシステム思考を形成する「題材」の基盤が形成された(意義・重要性)。 なお,システム思考の構成概念の分析結果については,日本産業技術教育学会の第54回全国大会,ロボット制御教材・題材の開発状況(一部)については,ICTE2011-Japanにおけるポスターセッションにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的である「(1)システム思考の構成概念とその構造」については,これらの結果から現在尺度構成の段階に至っている。「(2)システム思考の形成過程」については,研究協力校における試行的実践により,生徒の学習実態から分析を実施した。今後,尺度の完成の後に(3)と合わせてさらなる分析を実施する必要がある。「(3)システム思考を形成する開発題材(学習内容,開発教材,展開,指導方法)の評価」については,題材開発まで進んでいる。以上,最終年度の研究課題を残し,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については,開発したシステム思考を形成する題材について,現在までの試行実践をもとにブラッシュアップしていくとともに,研究協力校3校において,その評価を行う。合わせて,尺度を用いた評価及び学習者の学びの姿から,システム思考の形成過程について明らかにし,よりよい題材構成を検討するための知見を得ていく。
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