研究課題/領域番号 |
22530946
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
望月 一枝 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60431615)
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キーワード | 家族・家庭 / シティズンシップ教育 / ディスコース分析 / 公共的空間 / 教師のポジショナリティ / 授業 / 言語活動 |
研究概要 |
本研究の目的は、家族・家庭をつくるシティズンシップ教育の言語活動と実践構図を理論化することである。本年度は、英国のシティズンシップ教育研究者であるディビソン(Davison 2000)のディスコース理論を援用して、小学校、中学校、高等学校の家庭科の家族に関わる授業実践をディスコース分析し、教師の立ち位置と実践構図を理論化することができた。特に教師が授業でどのような権力性と空間的布置を取っているかという教師のポジショナリティに着目して分析した。分析対象とした小学校の授業実践は、家族に関する絵本を教材として、家族はどうやって家族になっていくのだろうと考える授業である。中学校の授業実践は、幼児の会話教材を用いて、他者の行動や特徴を読み解く授業である。高等学校の授業実践は、家族に関するできごとを生徒がテーマ設定して探求し議論する授業である。 分析した結果、教師は、私的で個人的な問題を公的に位置づけるために権力性を「活動の指示」や「質問」に用いてフレームワークを構成していた。また、生徒の発話を繰り返す「再話」によって、聞きあう空間にしていた。教師は、生徒が既有の知識と家庭から提供された知識で探求する活動を指示する。そして、生徒が教師から習う知識を変形できるようにフレームワークを構成しそれを見守る者として立つことである。他方、生徒の学びの文脈に即して教育目標としての知識やスキルを提供する役割も残されている。すなわち、教師は、単なる教え込みにならないように授業の文脈にそって、権力を「活動の指示」に用い、生徒が発話するたどたどしさを支える方略と、そこで議論されていることを意味づける知識によって、生徒の興味関心と教科内容と社会のディスコースを結びつけ、社会のディスコースを批判する教室のディスコースを生成することが重要であった。シティズンシップを獲得する公共的な空間は、生徒たちが親密な聞きあう関係となる空間であることが分析された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家族をつくるためのシティズンシップ教育授業実践を論文や著書にまとめることができた。来年度計画であった実践構図の理論化も著書として刊行できた。
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今後の研究の推進方策 |
フランスの学習指導要領改訂後の家族に関する教科書収集をしたので、それに関する研究論文をまとめる。
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