本研究の目的は、衰退しつつある児童美術文化を、IT技術および学校空間の活用を通して再生させることにある。22年度の研究においては、それまでの研究者本人の実践の整理と考察を行い、学校における共同制作と生活指導における集団形成の関係性を明らかにした。また、イタリアのレッジョ・エミリア市の幼児教育の外郭団体であるレッジョ・チルドレンを訪問し、アートディレクターであるヴィア・ヴェッキ氏にインタビューを行った。インタビューの内容は、レッジョ・エミリア市における大学などの研究機関との連携、デザイナーや建築家との協力関係をどのように形成しているかというものであった。さらには、レッジョ・チルドレンの入る「ローリス・マラグッツィ国際センター」を訪問し、子どもたちの作品と建築との関係について数多く情報収集することができた。また、アイルランドおよびデンマークにおいてアートを活用した若者支援センターを訪問し、その空間の工夫の仕方および利活用について調査した。 一方、大型プリンタを利用し、子どもたちの作品をPhotoshopなどのソフトウェアを用いて壁画を構成し、実際に三春町立岩江小学校、市立桜の聖母小学校の二つの学校で壁画およびタペストリーを制作し、展示した。制作にあたっては学生にも協力を得ることができ、さらに制作方法を洗練させることにより、学生によるボランティアグループでも対応できるものと期待される。次年度においては、子どもたちの作品をアニメーション化するなどの工夫も考えられる。
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