研究課題
本年度は、本研究課題の第一段階であり、美術鑑賞プロセスにおけるメタ認知のかかわりについての理論的なフレームワークを具体化し、以下のように考察を進めた。1.美術鑑賞プロセスにおけるメタ認知のかかわりと定義の検討まず、美術鑑賞学習におけるメタ認知のかかわりに関する先行研究をレビューした。特に美術鑑賞学習において、メタ認知がいかにかかわるのかについて、(1)発達的視点、(2)熟達化方略、(3)学習の転移、(4)学習者の資質のそれぞれの観点から検討した。次に、美術鑑賞学習におけるメタ認知の定義について検討した。一般にメタ認知は、メタ認知的知識とメタ認知的活動に分けられ、その両者が相互的に機能する活動ととらえられている。このメタ認知の分類をふまえ、美術鑑賞の学習におけるメタ認知的知識とメタ認知的活動を措定し、鑑賞スキルにかかわる活動を具体化し、それらをもとに鑑賞スキルにかかわるメタ認知活動の分析指標を作成した。2.鑑賞スキルを方略的知識とするメタ認知支援の効果についてメタ認知を促す支援方策の効果を検討するために、学習者のどのようなメタ認知的知識が活用されて、どのようなメタ認知的活動が促されているかを明確にする必要があり、本研究では鑑賞スキルを方略的知識とする観点に着目した。つまり、メタ認知的支援としては、鑑賞スキルの観点を学習者に理解させる活動の支援に焦点をあて、鑑賞スキルの観点が学習者のメタ認知的活動においてどの程度活用されるか、そして鑑賞スキルの学習効果とどのように関連しているかを検討した。具体的には2009年度に実施した大学生のデータから、鑑賞での思考を文字として外在化した鑑賞文とふり返りの記述を分析の対象とし、すでに開発した鑑賞スキルの熟達指標と、鑑賞スキルのメタ認知活動の分析指標との関連について分析を進めた。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
International Journal of Education through Art
巻: Vol 6, No.3 ページ: 327-341
DOI:10.1386/eta.6.3.327_1