研究課題/領域番号 |
22530950
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石崎 和宏 筑波大学, 芸術系, 准教授 (80250869)
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キーワード | 美術鑑賞 / メタ認知 / 学習方略 / 美術教育 / 鑑賞スキル |
研究概要 |
本年度は、本研究課題の第二段階であり、鑑賞プロセスでのメタ認知を支援する具体的方策を開発し、次のような課題の検討を進めた。 1.鑑賞者の思考の構造化を促すメタ認知的支援ツールの検討 鑑賞プロセスにおいて鑑賞者の思考が構造化される状態は、鑑賞の深まり状態の一つと考えられ、美術鑑賞において鑑賞者の思考の構造化を促す方策をメタ認知的支援の観点から具体化する試みを検討した。今年度は、思考の構造化を促すために次の三つの支援方略に着目し、具体的ツールを開発し、その有効性と課題を検討した。(1)作品に関する問いをメタ認知させつつ、思考の構造化を促す観点、(2)鑑賞スキルにおける作品要素と鑑賞行為をモニタリングさせていく観点、(3)ヒエラルキー・ダイアグラムを活用して鑑賞者が自らのキー概念をメタ認知するように促す観点である。この成果については第33回lnSEA世界会議において発表した。 2.美術鑑賞文の評価判断におけるメタ認知的モニタリングの検討 美術鑑賞におけるメタ認知では、鑑賞者自身が鑑賞プロセスで自らの活動をモニタリングするメタ認知方略とともに、他者の鑑賞や鑑賞文を評価するプロセスで自らの鑑賞の観点を省察するメタ認知方略も重要と考えられる。今年度は、他者が書いた鑑賞文を任意の観点で評価するプロセスを意図的にもたせることで、鑑賞のキー概念をメタ認知的に顕在化させていく可能性と課題を検討した。具体的には、他者が書いた鑑賞文を学生が評価する際、最初は評価者の任意の観点で評価し、各自の評価観点を記録した。その後、同じ評価者があらかじめ設定された評価観点にもとづいて同一の鑑賞文を評価し、任意の観点での評価と比較した省察を記録した。それらの記録データをもとにしたテキストマイニング分析により、鑑賞文の評価観点と鑑賞でのキー概念との関連について検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画を計画的に進めることができ、鑑賞者の思考の構造化を促すメタ認知的支援ツールの検討については、その成果を第33回InSEA世界会議において発表することができた。また、美術鑑賞文の評価判断におけるメタ認知的モニタリングの検討についても、現在データ分析を進めているところで、次年度にその成果を発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度であり、これまでの成果を総括しつつ、メタ認知的アプローチによる美術鑑賞学習について各発達段階に対応した具体的教材を作成し、学校での教育実践に展開できるよう検討を進めていく。また、それらの成果については関係学会で発表するとともに、新たにホームページを開設し公開していく予定である。
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