本年度は、本研究課題の最終段階であり、鑑賞文評価におけるメタ認知的モニタリングの分析を継続して進めるとともに、メタ認知的アプローチによる美術鑑賞学習の事例を集約し、ホームページを構築した。 1.美術鑑賞文評価過程におけるメタ認知的モニタリングのテキストマイニング分析 他者が書いた鑑賞文を評価する営為は、評価者に自らの評価の観点の明確化を促し、評価者自身の鑑賞の観点を省察させるメタ認知的モニタリングの機能を果たすと考えられる。そこで、他者が書いた鑑賞文について、大学生に任意の観点での評価と、すでに設定された観点にもとづく評価を行ってもらい、両者の評価記録と評価後のコメントを記録した。本年度はそれらの記録データをもとにテキストマイニング分析を進めた。特に大学生が他者の書いた鑑賞文を任意の観点で評価する場合の観点をカテゴリーとして抽出し、各観点間についての構造モデルを検討した。また、あらかじめ設定された観点での評価と比較し、鑑賞で重視される概念を事例分析した。 2.メタ認知的アプローチによる美術鑑賞学習教材集の作成とホームページの構築 これまで開発した美術鑑賞学習を効果的に促す教材事例を整理し、 学校等で教育実践できるように各発達段階に対応したメタ認知的アプローチによる美術鑑賞支援ツールの集約作業を進めた。理論編では美術鑑賞学習におけるメタ認知的アプローチの概念、構造モデルを明確化し、実践編では具体的鑑賞支援ツールの事例を類別した。また、それらのコンテンツをもとにして新たなホームページ「鑑賞支援ツールのひろば」(http://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/~kansho/)を構築した。さらに鑑賞支援ツールについては、教育実践における活用を考慮し、簡便な作り替えや応用がしやすいワークシートや鑑賞ツールをPDFファイルで作成し、ダウンロードできるようにした。
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