明治初期から昭和8年までり小学校入門用国語教科書の歴史を調査した。明治初期の入門今日国語教科書『ちゑのいとぐち』および『ういまなび』とその関連史料と先行研究を収集整理した。9月にはハンブルク学校博物館を訪問調査し、昭和8年使用開始の『尋常小学国語読本』に多大な影響を与えたとされているオットー・ツィンマーマン(Otto Zimmermann)による入門以下国語教科書『HANSAFIEBEL』および関連史料を調査し、初版本から各種改訂版および影響を与えた他の入門用国語教科書を多数発見し、それらを膨大な量の写真に収めて収集するとともに、関連書籍を複写あるいは購入収集し、博物館研究員から関連情報を聞き取調査した。その中で、従来の我が国国語教科書史研究の中で了解されてきた説を覆す発見もした。その一例をあげると、『HANSAFIEBEL』冒頭の挿絵についての説明が、泥に汚れたハイニが「ウー(U)」と叫んでいると『尋常小学読本』(いわゆる「サクラ読本」)編纂者井上赳が説明しているのは間違いであって、実際にはこぼれたインクに汚れて「ウー(U)」と叫んでいるのであるといことが明らかになった。それは、『HANNSAFIEBEL』の初版本から最終版までのすべての改定版を調査確認して明らかにした点である。帰国後は、収集した情報・史料の翻訳・整理と、『尋常上学読本』との比較整理と、その他の日本の入門用国語教科書史料の収集と整理を行った。明治19年発行の入門用国語教科書『読書入門』を発見しただけであり、さらなる資料収集が今後の課題として残っている。
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