研究課題/領域番号 |
22530953
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
首藤 久義 千葉大学, 教育学部, 教授 (20113897)
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キーワード | 入門用国語教科書 / 井上赳 / ハンブルク学校博物館 / オットー・ツィンマーマン / ハンザフィーベル / サクラ読本 |
研究概要 |
小学校国語科入門教材の歴史研究を継続・進展させた。1886年発行の文部省著作権所有入門教材『読書入門』(よみかきにゅうもん:湯本武比古実質編纂)を精査した。その編纂に当たって湯本が参照した国語入門教科書であるドイツで発行されたボック(Bock)による国語入門教科書(正確には、Lesebuch全4巻のうちの第1巻におさめられたFibel相当部分)の1870年代に出版された3種類の版をブラウンシュヴァイク市にあるゲオルクエッカート国際教科書研究所図書館で閲覧して、その本体及び関連史料を通覧し、必要個所を撮影して大量に収集し、日本の『読書入門』との比較考察を行った。他方、昨年度秋にハンブルク学校博物館を訪問調査して入手した『ハンザフィーベル(Hansa-Fibel)』(1914年初版発行)とその関連史料を精査して、『ハンザフィーベル』から劇的な影響を受けたとされている『小学国語読本』(通称「サクラ読本」1932年発行:井上赳実質編纂)との比較研究を行い、その成果を口頭および論文「ハンザフィーベルとサクラ読本」で公表した。その際未解決であった問題を解明するために、ブラウンシュヴァイク市にあるヴェスターマン出版社古文書館を訪問して、大量の教科書と関連史料を閲覧し、問題解決に必要な資料を大量に撮影・収集した。次年度はその資料を精査するとともに、本研究課題全体についての研究成果をまとめて公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収集してきた大量の史料を整理し、サクラ読本成立に多大な影響を与えたハンザフィーベルに関する未発見の事実や通説を覆す仮説を発見して学会発表や論文でその研究を公表し、ゲオルクエッカート国際教科書研究所とヴェスターマン出版社古文書館での調査を実行し、その仮説を検証するために必要な資料と情報を入手した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集した史料と情報の精査を行って、ハンザフィーベルとサクラ読本に関する比較研究を完成させるとともに、ボックのレーゼブーフと明治19年の文部省版権所有『読書入門』との比較研究、および、第6期国定教科書『こくご一』や戦後検定教科書のモデルとして文部省が出した国語入門教科書『まことさんはなこさん』と米国の教科書の比較研究を行う。その後の検定教科書の変遷を整理考察し、その土台の上に、国語入門教材の在り方について展望を明らかにして、その研究成果を公表する。
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