研究概要 |
平成22年度の研究では,スパイラルを重視した数学的活動による単元「式と証明」を開発し,その授業実践と分析を通して,代数学習の深化を促す単元と効果的な学習方法に関する考察を行った。単元「式と証明」の学習では,比較や関連づけなどを通して等式や不等式の理解を深めることや,今までに学んできた数の性質などをふりかえり,公理的にとらえ直したり,証明を通して見方を拡げることが行われた。この単元での学習活動について,活動の質が変容した学習場での生徒の筆記物の記述分析や学習過程の分析を行った。その結果,次の傾向がみられた。 1.5つの学習活動を通して相加・相乗平均の学習の深化が行われ,事象の中にこれらの関係を見いだして問題解決する姿勢が高まる。また,学習活動の相互の関連づけを図ることが,学習の深化につながる。 2.単元「平方根」で学んだことがらを,単元「式と証明」でふりかえり新たな意味形成を行う学習経験は,生徒に驚きや感動を強く与える。その学習経験を生むための他者との議論,単元を超えて学んだことがらを関連づける内省の行為,授業者による足場設定やゆさぶりが必要となる。 3.式の意味を文脈で解釈する活動により,式の形を強く意識して式をとらえ複数の式を統合的にみたり,式変形の先を意図する見方が高められる。 4.問題解決活動をふりかえり,その行為を式に関連づけることにより,式の形や構造への着目が生じる。 5.「例で考える」ことが,式と証明の学習の深化につながる。一方,生徒が着目した特殊な例のもつ属性への固執により,式で考える手がかりをつかめない場合も生じていた。
|