本研究では、食の安全や食品ロスなどの現代的課題にも対応できる自立した生活者を育てることをめざした家庭科における食教育プログラムを開発することを目的とする。そのため本年度は、昭和と平成期における小学校家庭科教科書を資料とし、家庭科における食の安全に関わる教育内容とその時代や社会の情勢を分析し、それぞれの時代において食の課題をどのように捉え、どのような学習が行われていたかを検討した。食品の選び方についてみると、昭和50年代では品質表示や製造年月日に注意して選ぶことの大切さが記述され、平成期になるとできるだけ食品添加物を使ってないものを選ぶことの大切さが記述されていた。加工食品の使用が増加したことや、食品の表示や衛生・安全に関する法が整備されたことを反映した記述であることが明らかとなった。調理に用いる燃料についてみると、昭和30年代では、炭火、プロパンガス、石油こんろ、昭和40年代・50年代は、プロパンガス、都市ガス、電気、木炭、石油、昭和60年代以降はガスが主な家庭用燃料として記述されていた。家庭用燃料が炭から灯油に移行し、さらにガス、電気へ移行してきた歴史を反映したものとなっていた。野菜の洗い方についてみてみると、野菜の栽培方法の変化とともに、野菜の洗い方に関する記述も変化していることが明らかとなった。以上から、小学校家庭科における食の安全に関わる教育内容は、その時代と社会における生活実態をふまえたものであり、それぞれの時代における食の課題を反映したものであることを明らかにした。
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