安全な食を入手し安心を得ることは、生活の基盤として重要であり、生活者にとって大きな関心事である。そこで本研究では、食の安全や食品ロスなどの現代的課題に対応できる自立した生活者を育てることをめざし、家庭科における食教育プログラムを開発することを目的とする。そのため本年度は、家庭科学習においてそれぞれの時代における食の課題をどのように取り上げどのような学習が行なわれてきたかを小学校家庭科教科書を資料とし、それぞれの時代の社会情勢、経済状況、生活実態、食糧事情などと照らしながら分析を行った。調理についてみると、昭和30年代に野菜を生で食べることが一般的になると、野菜を中性洗剤で洗うよう記述され、当時の野菜の栽培方法を反映したものになっていた。昭和50年代に入ると、洗剤の洗浄効果よりも洗剤の残留の方が問題となり、野菜を洗うときに中性洗剤を使わないよう学習内容が変更されていた。本来食べられる食品を廃棄してしまう食品ロスの問題については、平成10年代頃から冷蔵庫にある食品を使っておかずを作ろうという記述がみられ、平成20年代になると無駄なく食品材料を使った料理が紹介されている。家庭科においては安全と健康を守るたあにそれぞれの時代に即した食の課題が取り上げられてきたこと、食材の栽培方法や調理方法の変化に応じ、最新の科学的知見を取り入れることにより学習内容や指導方針が変更・改善されてきたことを明らかにした。同時に生活者の食の安全に対する意識や関心の所在を明確にすることも学習内容を考える上で重要なことである。
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