現在の食の安全を取り巻く状況を考えると、家庭科における従来の食の学習に加え、食品を安全に適切に選び食の安全について適切な判断力を持った生活者を育てるための学習が必要とされる。そこで本年度は、中学校家庭科においてそれぞれの時代における食の課題をどのように取り上げどのような学習が行なわれてきたかを中学校家庭科教科書を資料として、把握することとした。小学校では野菜や卵の選び方が中心であったが、中学校では魚や肉などの生鮮食品の安全で適切な選び方と安全で衛生的な扱い方が中心となっていた。また、食品を腐敗させないための保存方法についてもふれられており、昭和30年代では、野菜や魚類、肉類、飯などの腐敗を防ぐための家庭での保存方法が記述されていた。昭和40年代後半になると、市販されている加工食品の選び方が記述されるようになり、食品添加物や表示なども学習内容となっていた。昭和50年代には加工食品の問題点が記述されるようになり、加工食品の利用の増加にともない加工食品の選び方だけではなく加工食品の問題点などが記述されるようになっていた。昭和60年代には、保存のための冷蔵庫や冷凍庫の使い方が記述されるようになった。平成に入ると、加工食品に関する記述はさらに増えるとともに、外食や輸入食品への依存にかかわる問題点などにもふれられていた。食品の生産、加工、貯蔵などの技術の進歩、輸送機関の発達などにともなって食生活が大きく変化する中で、家庭科においては安全と健康を守るために、それぞれの時代に応じた食の問題を取り上げ、学習が行われてきたことを明らかにした。
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