研究概要 |
科学的な探究を前提としている理科の授業であっても,内容によっては予測や推論があまり意味を持たないものもある。しかし,小学校で行われる理科の授業の場合,その内容のみで仮説検証型の問題解決活動として適当かどうかを判断することは不適切で,自然の事物・現象へ児童の働き掛け方や理解の程度と併せて判断する必要がある。そこで,第5学年の植物の発芽,成長に関する指導内容を扱った実践場面,第5学年の電流の働きに関する指導内容を扱った実践場面,第6学年のてこの規則性に関する指導内容を扱った実践場面等の実際の授業実践を基に,児童が見通しをもったり見通しに沿って観察,実験を行ったりすることを困難にしている原因を分析した。その結果,生活経験や学習経験が見通しをもつための先行経験として位置付けられていなかったり,自然の事物・現象の中から手がかりとなる事実を十分にとらえさせていなかったりする状況が見られ,児童が見通しをもつために必要な根拠をもたない場合があるという問題が明らかになった。この問題を解決するための方法として,てこの規則性に関する指導内容を扱った学習指導において,実験用てこを使って水平につり合うときのきまりを調べるための根拠を与えて児童の予測や推論を支援するための教材と教材の位置付け方を考案したり,実験用てこを用いて見いだしたきまりを基に予測や推論したことを検証して明確な規則性として認識できるようにするための教材と活動展開を工夫したりして,児童の予測や推論を支援し仮説検証型の問題解決活動ができるようにする方法を提案した。
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