児童の予測や推論の成立を妨げている原因として,予測や推論をするための根拠となる事実が適切に得られていないこと,観察,実験の結果を用いて予測や推論をする必然性がないことが挙げられる。予測や推論を意図的に促す場面として,観察,実験の結果を予想する場面と,結果をもとに考察し結論を導く場面がある。観察,実験の結果を予想する場面では,個々の児童が予測や推論を具体的に表現できることと,生活経験や学習経験に依存するのでなく予測や推論に必要な情報を適切に与えることが必要な条件となる。また,結果をもとに考察し,結論を導く場面では,実験データを信頼のできる情報として適切に処理することと,導き出された結論を用いて他の場面に適用する機会を設定することが必要な条件となる。前者に対しては,予測や推論として基準を設けて個々の予測や推論の共通点や差異点を表現させること,数量に表すなどして予測や推論を具体的に表現させることなどが効果的である。後者に対しては,個人やグループが個々に実験結果を扱うのでなく,それらを持ち寄り全体の傾向として承認できる結果に整理すること,結果から導き出した性質や規則性をすぐに結論とするのでなく,それらを他の場面や状況に当てはめて予測させたり推論させたりすることで,一般化を図ることなどが効果的である。このような条件を総合的に組み合わせた授業設計を行うためには,それらを可能とする一定の仕組みを備える教材を工夫しておく必要があり,予測や推論をするために従来の授業の時間配分等を見直す必要がある。予想させること,考察させることが重要と分かっていてもそれらが形骸化した授業が見られる中で,予測と推論の成立を意識した具体的な指導方法の提案は,思考力・判断力・表現力の育成が重視されている授業の改善にも役立つものと期待している。
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