研究課題/領域番号 |
22530974
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
虫明 眞砂子 岡山大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90206847)
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キーワード | 合唱 / 音楽カリキュラム / バランス / フィンランド |
研究概要 |
児童生徒一人一人が、柔軟性のある無理のない声で、その力を最大限に発揮する発声法を習得できることを合唱指導法開発の最終到達目標とし、本研究は、その一環として心技体のバランスのとれた合唱指導法について検討することを目的とする。平成23年度は、平成22年度に引き続き、この目的のために国内外の学校教育機関の合唱活動の視察を実施した。国内視察としては、合唱活動の盛んな小学校、高等学校各1校の音楽授業および合唱部の視察を行い、国外視察としては、フィンランドのフォルッサ市にあるロウナイス・ハメーン音楽学校の音楽授業を視察した。国内視察からは、音楽授業での器楽、歌唱、鑑賞などのバランスのとれた授業内容が、子どもたちの感性を高め、尚且つ歌唱力も向上させ得ることが確認できた。ロウナイス・ハメーン音楽学校では、児童生徒を年齢別に分けた3クラス、一般の女声合唱、混声合唱のクラスの視察、及び指導者へのインタビューを行った。さらに、前年度のエスポー音楽学校の訪問で得た新たな知見「合唱教育と器楽教育が密接に関連付けられており、その教育システムは、音楽力の向上の点でも相乗効果を上げ得る」ことに基づいて、弦楽やピアノ、合奏アンサンブルのクラスも視察した。今回の視察でも、合唱クラスでは、心身の開放を目的としたウオーミングアップが取り入れられており、器楽関係の授業においては、楽器演奏と歌唱を結びつけることによって、読譜力、初見能力を向上させる指導法が取り入れられていた。また、音楽理論やソルフェージュの理論授業を個々の専門である演奏に結びつけていることもわかった。以上の結果から、背景にあるフィンランドの音楽教育機関の特徴も考慮に入れ、以下のような結論を得た。フィンランドの音楽教育システムは、国民一人一人が主体的に活動に取り組めるような多様な音楽教育機関を設置しており、各機関はそれぞれ特徴的なカリキュラムを用意している。その根幹にある考えは、(1)聴くことと演奏することの両方を重視し、演奏家と聴衆の両方を育てること(2)幼児期の音楽教育が重要であること、の2点があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題である『心技体のバランス』と合唱活動との関連性」の研究を進める中で得られた新たな知見について、多様な側面から検討する必要が出てきた。取分け、器楽分野と合唱分野の連携の重要性及び、それに関連して、フィンランドの音楽カリキュラムについて検討を行ったため、文献・資料の整理に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得た知見や考察結果を基盤として、本研究の主軸となる「心技体のバランス」についての検討に入る。平成24年度は、「バランス」に焦点を当て、アンケート調査と音声の実験を行い、バランス力が声にどのように影響するのか検討する予定である。併せて、平成22年度から行っている、心身のウオーミングを取り入れた合唱指導や和声感の育成、バランスのとれた音楽授業などの指導や実践を行っている教育機関等の訪問を引き続き行い、新たな情報、知見を得たいと考えている。
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