研究課題/領域番号 |
22530974
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
虫明 眞砂子 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90206847)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 心技体 / バランス / 合唱 / 指導法 / ウォームアップ |
研究概要 |
日本の学校教育のおける音楽教育では,音楽で心をつなぐといった精神面での充実が教育の基盤にあると考えられるが,その中にあって,合唱教育現場では,ややもすると声の技術的な発声訓練や指導に重点がおかれがちである。本研究は,心技体のバランスが演奏に大きな影響を与えるのではないかという仮説を立て,平成22年度より研究を進めてきた。これらの検討を踏まえ,児童生徒一人一人が,柔軟性のある無理のない声で,その力を最大限に発揮する発声法を習得できる合唱指導法を開発することを最終到達目標としている。 平成24年度は,平成23年度に引き続き,国内外の学校教育機関の合唱活動の視察を継続実施し,また,心身のリラックスと演奏との関連性についての実験調査も行った。先ず,合唱活動の視察調査については,国内では,合唱講習会を通して,合唱活動の盛んな小学校,中学校,高等学校の合唱部の演奏や指導法を視聴できた。また,教員養成大学の合唱授業の視察も行った。国外では,ハンガリーのニーレジハーザを中心に,幼稚園,小学校,コダーイ音楽学校の授業を視察した。また,カンテムス少女合唱団・プロムジカ女声合唱団・カンテムス混声合唱団リハーサル等にも参加した。ここでは,テンポ感のある授業展開が行われ,児童生徒と授業者が強い信頼関係で結ばれており,児童生徒の最高の音楽性を引き出す指導を見ることができた。また,児童生徒の自発性を促す教材,授業方法,指導者の言葉かけに工夫が見られた。次に,心身のリラックスと演奏との関連を明らかにするために,声による実験調査を行った結果,気分と演奏効果についての関わりを見いだすことができた。これについては,平成25年度に論文発表する予定である。本研究に関連する歌唱指導、発声指導の一環として,岡山大学の学生オペラの指導を行い,また,CD日本歌曲大全集8集で,團伊玖磨作曲「わがうた」全曲を発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題である「『心技体のバランス』と合唱活動との関連性」の研究を進める中で,国内外の音楽授業や合唱団の視察によって得られた新たな知見,また再考すべき点について,多面的に検討することができている。研究の最終段階に来ており,これまでの資料を整理・検討し,実践法を具体化している中で,24年度に行ったアンケート調査と音声の実験研究を取り入れたため,そのまとめに予測以上の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得た知見や考察結果を基盤として,本研究の主軸となる「心技体のバランス」についてのまとめに入る。平成25年度は,本研究のテーマである「心技体バランス」に焦点を当て,24年度に行ったアンケート調査と音声の実験結果をベースに,さらにメンタルトレーニングの実験を行い,心技体のバランス力が声にどのように影響するのか最終検討する予定である。平成22年度から行ってきた心身のウオームアップを取り入れた合唱指導や和声感の育成を目指した実践練習法など,国内外の合唱団の視察や岡山大学での実践に基づいて,合唱練習に有効と考えられる「心技体のバランス力を合唱練習に活かす実践方法」をまとめる。 今年度,補足のため新たに実験を行うことや米国の教本の翻訳の未完成箇所を完成するなど,多くの時間を要すると考えられる。今年度は,大学の講義時数や社会的活動が増えたため,夏期休業,冬期休業を利用し,研究時間を確保,効率的かつ迅速に最終目標に到達できるよう努力したい。
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