本研究は,心技体のバランスが演奏に大きな影響を与えるのではないかという仮説を立て,それを実証するために平成22年度より進めてきた実践研究である。平成25年度は,本研究の最終年度となるため,平成24年度までの研究成果に立脚して,更に24年度に行ったアンケート調査と音声の実験結果をベースに,メンタルトレーニングを取り入れた実験を行い,心技体のバランス力が声にどのように影響するのか最終検討した。 心身のウォームアップを取り入れた合唱指導や和声感の育成を目指した実践練習法について,国内外の合唱団の視察や岡山大学での実践に基づいて検証した結果,身体的な観点からは「呼吸」と「姿勢」を大切にした指導が行われていることがわかった。他方,心理的観点からは仲間との触れ合いを取り入れて心をほぐすなどの工夫も見られた。また,呼吸と運動が同時に行われて息が自然に声につながるための手立てとなる示唆を得た。そこで,歌唱時のウォームアップにメンタルトレーニングを取り入れ,心技体それぞれの視点を取り入れた内容で歌唱練習を一定期間行った後に,アンケート調査と視聴実験を行った。その結果,全体的には,演奏本番に向かって,心技体のバランスを取り,良い状態にしていこうとする傾向にあること,その中にあって,心技体のバランスがとれていない学生においては,マイナス面の分野を大きく改善される傾向にあること,また,演奏経験の長い学年は,経験の短い学生に比べて,心技体の中ではメンタル面の改善が一番大きく,常に気持ちをアップさせて技術面を伸ばそうとする傾向があることがわかった。 以上のことから,心身のリラックスを促し,自信を持たせることが全体的に演奏能力向上に有効であり,演奏経験のある学生にとっても,技術面の伸張に繋がることが示唆された。
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