研究概要 |
3年間にわたる本研究の目的は,次の3点にある。第1は,数学教育における各種の認識論(構成主義,社会文化主義,相互作用主義)や数学的一般化に関する理論に基づきながら,社会的相互作用に基づく算数・数学の教授・学習モデルを理論的に構築することである。第2は,教師に対する意識調査を通じて,具体的な教材における社会的相互作用に関する実践的課題を導出することである。第3は,意識調査によって明らかになった実践的課題をふまえながら,構築した教授・学習モデルに基づいて授業改善案を策定し,実験授業を通じて,その有効性を検証することである。 2年次にあたる平成23年度の研究では,次の3つの研究に取り組んだ。第1として,1年次に引き続き,数学教育における各種の認識論における社会的相互作用のとらえ方を考察した。特に,平成23年度の研究では,構成主義と対比しながら,Vygotskyを代表とする社会文化主義における社会的相互作用のとらえ方を考察した。 第2として,小学校算数科第2学年の「たし算」の指導について,小学校の現職教師を対象に調査を実施し,社会的相互作用の充実という視座から,指導上の課題を抽出した。また,このような教師の数学指導観の分析をもとに,社会的相互作用に基づく「たし算」指導のポイントを検討した。 第3として,社会的構成主義に基づくカリキュラムを重視しているフィンランドのカリキュラムや教科書を考察するとともに,フィンランドの算数・数学科授業の特徴を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的研究として,構成主義,社会文化主義,相互作用主義といった各種の認識論における社会的相互作用のとらえ方について,徐々に明らかになってきている。また,実践的研究として,平成23年度には,現職の小学校教員を対象とした調査を実施し,社会的相互作用に基づく算数科の授業づくりに関する課題も明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究では,平成23年度の理論的研究と実践的研究をふまえ,算数科の具体的な教材をとりあげながら,授業観察あるいは実験授業を通じて,社会的相互作用を重視した算数科の授業に関する理論的枠組みを構築するとともに,実践的な示唆を得たいと考えている。
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