研究概要 |
生活実践への自己効力感の向上を促す家庭科ものづくり授業の構築を目的として本年度は以下のことを行った。 1.生活実践への自己効力感を問う26~29項目及び一般性自己効力感を問う18項目,家庭科やものづくり学習の好みを問う5項目,成果を問う18項目について,昨年度行った調査結果を分析した。その結果,小学6年生(271名)では,生活実践への自己効力感「生活の科学性」群の「生活の数的処理」と家庭科への好意度及び布等によるものづくりへの好意度との間に比較的強い相関がみられた。また生活実践の自己効力感とものづくり学習の成果との間で比較的強い相関がみられた項目は女子に多く,特に「生活に対する感性」群の「生活の美・芸術」は学習の成果を問う16項目との間,さらに「生活の創造性」群の「環境醸成」は同12項目との間に比較的強い相関がみられた。一般性自己効力感の「チャレンジ精神」因子に含まれる項目と布等によるものづくりへの好意度との間には,女子のみ比較的強い相関がみられた(日本家庭科教育学会第54回大会発表)。中学3年生(309名)においては,男子では生活実践への自己効力感の「生活の創造性」群の3項目と家庭科への好意度との間に比較的強い相関がみられたが,女子ではその傾向はみられなかった。一方,女子はそれら3項目と布等によるものづくりへの好意度との間に比較的強い相関がみられた。小学生にみられた「チャレンジ精神」と布等によるものづくりへの好意度との間の相関は中学生ではみられなかった(日本教科教育学会第37回大会発表)。高校生(434名)では,小学生と類似の傾向がみられた(日本家政学会第64回大会発表予定)。 2.調査結果と授業観察に基づいて,生活実践への自己効力感の向上を促す家庭科ものづくり授業では主体的な取り組みを促すことが優先課題であるととらえ,指導計画を検討し,中学校2校で構想,実践し成果をみた。
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今後の研究の推進方策 |
小学生,中学生,高校生の調査結果を総じて,発達段階及び教育課程との関係でどのように解釈するか難しいと考えている。最終年度となる来年度は,同時進行してきた基盤研究(B)「我が国の小・中学校『ものづくり教育』再構築に関する研究」(課題番号:20330187)の成果にも照らして,生活実践への自己効力感の向上を促す家庭科ものづくり教育の再構築に向けて,各校種での提案を行いたい。教授学習過程における子どもたちや教師の認知過程および相互作用の詳細分析については,今回は対象校種を絞って可能な範囲で行う予定である。
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