研究概要 |
テイト・ギャラリーの教育普及活動は,義務教育課程の学校との連携と美術にたいする教師教育および相互啓発に基づく非常に質の高い内容を誇っている。特に,美術館と学校が連携して行う,実践的な教育プログラムはユニークであるだけでなく,その規模も大きい。その実施の方法論と教育的意義の両面について,主要な関係者から調査・研究することは,美術教育における美術館利用のあり方を検討し,学校と美術館が連携して行う鑑賞教育を充実させるうえで,示唆的であると同時に有益である。 平成24年度は,平成22年度に実施したバーバル・アイズというプロジェクトにかかわった学芸員と小学校教員(ミルバンク・プライマリースクールの教員)からの聴き取り調査と,平成23年度に行われた学校に派遣されたアーティストからの詳細な聞き取り調査の結果を照合し,整理し,この教育プログラムの実像を立体的に把握することに努めた。 美術科教育学会での口頭発表のための研究協議を通じて,このプロジェクトには,アーティスト・教員・学芸員にとって相互啓発的な要素が含まれていること,現代の美術の動向を学校に伝達する実験的性格を帯びていたこと,さらに,テイト・ギャラリーを生徒の作品展示の場としても活用することで,表現活動と鑑賞活動を有機的に結びつけることに成功していたことがわかった。 平成25年2月に「こどもの城研修室」(東京・渋谷区)にて,テイト・ギャラリーの教育アプローチというタイトルを付して,科学研究費助成による本研究成果の報告会を実施した。平成25年3月には,3年間の最終年度として,この研究成果報告会と美術科教育学会での発表内容などを編集して纏めた報告書を発行することができた。
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