研究概要 |
本研究では,算数科における教師の受業実践の質を高めるために,教師と児童の思考や言動に影響する心的要因を数学に対する信念・価値・素質・感情・態度とした。これら5つの要因の内,数学に対する信念・価値・態度についての測定尺度は既に開発しており,今年度の計画では,数学に対する素質及び感情尺度を開発すること,教師の数学に対する信念・価値・素質・感情・態度間の関係を明らかにすること,児童の数学に対する信念・価値・素質・感情・態度間の関係を明らかにすることが目標であった。 今年度の成果として,教師と児童の数学に対する感情尺度の開発に関して,数学教育学会の「数学教育学会誌」に「数学に対する感情尺度の開発に関する研究」(査読有)として掲載された。また,数学に対する素質尺度に関しては,数学教育学会に投稿中である。これら数学に対する素質・感情の研究が完成したので,教師と児童の数学に対する信念・価値・素質・感情・態度に関する測定尺度ができあがった。教師と児童において,これら5つの要素間の関係が明確になった。また,教師と児童の数学に対する信念・価値・素質・感情・態度という情意的側面について,客観的に評価することができるようになり,教師は,教師自身と児童の数学に対する信念・価値・素質・感情・態度間の「ずれ」と「ギャップ」を知り,個々の児童への指導上の対策を図ることができるようになった。具体的には,神戸大学附属小学校の第3学年から第6学年の児童を対象として数学に対する信念・価値・素質・感情・態度について評価を行い,職員研修に役立てることができた。また,鳴門教育大学附属小学校の第6学年を対象として,数学に対する信念・価値・素質・感情・態度について評価を行い,これら5つの要因と問題解決における課題分析及び問題形成の関係について分析を行った。
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