研究概要 |
児童の学力の向上や教育の質の向上は,教師の授業実践の質の向上に負うところが大きい。そこで,本研究では,算数科における教師の授業実践の質を高めるために,教師と児童の思考や言動に影響する心的要因を数学に対する信念・価値・素質・感情・態度とし,これら5つの要因に関する教師と児童の測定尺度を開発し,教師の5つの要因の関係,児童の5つの要因の関係,教師と児童の数学に対する信念・価値・素質・感情・態度,教師の授業実践力,児童の授業理解の間の関係を明らかにし,教師の授業実践の政善を図ることを目的とする。5つの要因に関する教師と児童の測定尺度を開発するために,小学校教師137名,第6学年の児童約332名を対象とし,調査を実施した。調査結果の分析と考察により,5つの要因に関する教師と児童の測定尺度を開発し,教師の5つの要因の関係と児童の5つの要因の関係を明らかにすることができた。そして,これらの成果は,日本数学教育学会・数学教育学会・日本科学教育学会・日本教育実践学会の各研究誌に掲載された。また,神戸市内のA小学校の算数科の職員研修に参加し,教師の研修前後の5つの要因の変容を調べたり,第5学年の「小数×小数,小数÷小数」・「割合」に関する指導授業を行ったりして,教師の授業実践力の向上を図ると共に,これらの授業に対する児童の授業理解と児童の5つの要因間の関係を詳細に調べたりしている。来年度は,これらの授業の結果の学会発表や学会への投稿を行い,幅広くフィードバックし,教師の授業実践の改善を図っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
教師と児童の数学に対する信念・価値・素質・感情・態度の測定尺度を用いて,算数科の職員研修前後の教師の5つの要因の変容を調べたり,第5学年の児童に実施した「小数×小数,小数÷小数」・「割合」に関する授業前後の5つの要因の変容や授業理解についての結果を分析したりし,この成果を学会発表や学会への投稿という形により残し,幅広いフィードバックという観点から,教師の授業改善を図っていきたいと考えている。
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