今年度は,国内の学会等での報告などを通して,収集した実践的側面,理論的側面の分析,類型化,アメリカ合衆国における社会科グローバル学習の展開の解明につとめることを行った。 学会報告では,「1970年代米国において提唱されたグローバル教育とその学習論 -James M. Beckerのグローバル教育論の再検討-」(日本グローバル教育学会),「アメリカ合衆国におけるグローバル教育の進展とNCSSの対応」(日本社会科教育学会),「米国におけるグローバル教育提唱以前の世界に関する学習論」(全国社会科教育学会)を行った。 アメリカ合衆国における社会科グローバル学習は,大きく3つの展開を経ている。成立期には,世界を中心に据えた教育(World-Centered Education)を提唱し,容の観点として,「世界中心」,「世界情勢または外交政策研究」,「世界文化または地域学習」の3つを提示している。そして,アメリカ合衆国内における身近な地域にひそむグローバルな内容を取り上げるものであった。展開期には,反省的探究を重視している社会科教育論,あるいは,その教育論者は,その社会科を充実させる可能性を保持しているグローバル教育にアプローチしていったと考えられる。グローバル教育は,社会科として取り上げる社会問題も単純に空間拡大するのではなく,重層構造を持ったものとなる学習を可能にした。最近においては,アメリカ合衆国内における多様性と統一性の止揚するものとして,グローバル学習論が位置づいている。
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