研究概要 |
本研究の目的は、小学校「図画工作科」における「普通教育としての技術教育」を含むカリキュラムを開発し、「美術」的内容と「技術」的内容の連携の可能性を探ることである。本年度は諸外国の小学校・図画工作教育の内容・位置づけと技術教育の実態を探るため、イギリスを訪問調査し上記の件を分析した。結果は以下のようにまとめられる。 まず「教科の位置づけ」であるが、イギリスの「普通教育としての技術教育」教科はDesign&Technology (DT)であり、初等学校1・2学年(KS1)から中等学校7~9学年(KS3)で行われている。なお10~13学年(KS4~5)では、GCSE(上級学校進学の教育資格)対応のため、Graphic,Production Design等の下位科目別に履修される。日本の「図画工作科」に関わる教科としてはKS1~KS3にArt&design (AD)があるが、DTとは明確に区別されている。 次に「教科の目標・内容等」であるが、DTのキーワードはcreative(独創性),problem solving(問題解決),sustainability(環境保全)にあるとされ,これらに繋がる技術的能力育成が目指されている。またDTの基本概念としてmarketing(市場分析:誰のためのものか),constructional(構造的:どんな構成にするか),conceptual(発想的:どう為すか),technical(技術的:どう機能実現するか),aesthetic(美的:どんな見た目にするか)の5つが提案されている。これら基本概念をどの学年(KS)で重視するかという観点でカリキュラム構成される。 以上の結果から,本年度の目的に照らして明らかにできたことは,イギリスのDTはArt(芸術)を取り扱うADとは区別されているものの,その基本概念の一つにaesthetic(美的な見た目のよさ)が含まれており,この点が我が国の「図画工作科」で「美術教育」的内容と「技術教育」的内容の連携を図る手立てとなる可能性である。次年度は、この観点で具体的教材開発を進めたい。
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