研究課題/領域番号 |
22530994
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研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
渋谷 寿 名古屋女子大学, 文学部, 教授 (70216034)
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研究分担者 |
宇野 民幸 名古屋女子大学, 文学部, 准教授 (10387665)
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キーワード | 造形教育 / 玩具 / 数学教育 / デザイン / ワークショップ / カオス |
研究概要 |
「数学的要素を組み込んだ玩具づくりワークショップは、子どもの造形的・創造的感性、理論的思考力、ものの本質を見抜く基礎力を獲得させる」という独自の仮説に基づき、今年度は、前年度に開発した多重カオス運動を原理とした「龍」をモチーフとして、予測不可能な動きをする玩具を更にデザイン展開した。すなわち、「龍」と関係の深い「宝珠(木球)」に磁石を埋め込み、「龍」の頭部を磁着させる動きを、玩具の操作として取り入れたカオス玩具を開発した。それを原型として教材化し、子どもを対象としたワークショップ「カオスの原理で動く龍をつくろう」を実践した。その後、新たな数学的・物理的要素として、回転・遠心力・重力・発音等の要素を持つ玩具「音の出る尾舞い鳥」をデザイン開発し、それを原型として教材化し、小学生・幼児(5歳児)を対象とした玩具づくりワークショップ及び親子を対象とした玩具づくりワークショップを実践し、画像・アンケート等種々のデータを収集した。それらを分析した結果、今回取り上げたテーマは比較的高度な内容であったにもかかわらず、子どもから大人までの多くの参加者が興味を持って肯定的に関わり意義深かったことが分かった。なお、今年度前半に実施した「龍」をテーマとしたカオス玩具づくりワークショップ実践と、前年度のカオス玩具づくりワークショップ実践の結果は、「決定論的」「予測不可能性」「推移性」「共鳴性」という数学的キーワードを用いて学会発表(平成24年4月に優秀ポスター発表賞受賞)した。また、玩具創作と、今年度に実施した6回のワークショップの結果を相互にフィードバックさせて、「予測不可能性」、「回転・遠心力・重力・発音等」をテーマとした玩具作品を10回の展覧会において発表した。今後は、仮説の検証方法を精査すると共に、数学的な内容(動作原理等)をより分かりやすく示す方法を明確にすることを課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究実施計画では、1)「龍」のカオス玩具のまとめと新たな玩具の開発、2)ドイツ他ヨーロッパの玩具調査、3)新たなワークショップ・プログラムの開発、4)アンケート調査の解析及び数学的要因を分析した内容を含む発表用ポスターの作製・発表を上げた。1)「龍」のカオス玩具のまとめについては、開発した数種類の「龍」の玩具作品を作品展で発表した。また、回転・遠心力・重力・発音等の要素を持つ玩具(音の出る尾舞い鳥)を新たにデザイン開発した。2)に関して、現地調査は出来なかったが有馬玩具博物館における調査を実施し資料を収集した。3)に関して、カオスの他に新たに、回転・遠心力・重力・発音等の要素を持つ玩具(音の出る尾舞い鳥)を教材化しワークショップを計画の上実施した。4)に関して、調査を実施・解析の上、玩具づくりワークショップに数学的内容を取り込んだ意義を学会発表で提示した。以上の結果から総合的に(2)と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
3年間の研究の総合的なまとめとして、研究成果報告書作成(翌年度刊行を予定)を目標にしつつ、本研究成果を発展させる視点で、玩具づくりワークショップ実践と玩具デザイン作品開発を有機的に関係させながら推進する。具体的には、新たに物理の専門家の研究協力も得て、今日まで集積したデータを分析しながら、新たなテーマを開発し玩具づくりワークショップを実践する。実践終了後に参加者を対象としたアンケート調査を行い数学的要因を組み込んだ玩具づくりワークショップの意義に関する当初の仮説の検証を行う。また、これらの研究過程から派生する玩具デザイン展開を相補的に行い作品展で発表すると共に、その成果を玩具づくりワークショップのテーマ開発にフィードバックさせる。最後に、新たな研究方針・内容を明確にした上で3年間の研究内容・成果をまとめる。
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