数学的要素を組み込んだワークショップは、子どもの造形的・創造的感性、理論的思考力、物の本質を見抜く基礎力を獲得させるという独自の仮説に基づき、今年度は、数学的視点に物理的視点も加えて、制御(サイバネティクス)に着目した玩具デザインを展開し、作品としてのオリジナル玩具を開発した。それは、2個の円錐の底を接着したコマをV時型に開いた坂を上らせる原理を応用し、2本のレールを閉じたり開いたりしてコマを往復させる操作を楽しむものである。それを基に、木材を主素材とする玩具づくりと、玩具の動作の解析や原理の理解を目的としたワークショップ・プログラムを開発の上実践した結果、内容はやや難しいが興味・意欲は高いという一定の教育効果を確認した。また、川の上流に向かう水中翼船を制御して遊ぶ船をデザインした。そして、船の前進方向の浮力と側面方向の回転モーメントについて、数学的視点を発展させ、物理的視点で解析した図を用いて、玩具づくりの前に解説した。その結果、小学校中高学年の子どもたちは、創造的な楽しさの他に理論的に考えてつくるという教育効果と、又やりたいという意欲を確認した。次に、幼児を対象としたワークショップとして、カルマン渦による音の出る玩具をデザイン開発した。その玩具に、人差し指1本で回転させる機構を付加して、それらの物理的解析の図を作成し、玩具づくりワークショップを実践した。その結果、対象が幼児の場合は理論的解説というより、動作の面白さや、挑戦して遊ぶというスキルがある玩具での遊びの体験が重要であり、指導者が玩具動作の解析を通して、玩具の構造や動きを理解しておくことが重要だと分かった。一方、玩具づくりワークショップと相補的に、カオスを原理とする作品としての玩具デザインを発展させ、新たに、制御(カオスを含む)するという考え方で、作品としてのオリジナル玩具を制作し、各種展覧会で発表した。
|