研究課題/領域番号 |
22531001
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
名取 一好 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター・基礎研究部, 客員研究員 (70026623)
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キーワード | 日本版デュアルシステム / キャリア教育 / 職業教育 / 専門高校 / カリキュラム / 職業観形成 / 汎用的能力 / 職場実習 |
研究概要 |
専門高校における職業教育に求められるのは、単にそれぞれの分野に関わる知識・技術のみではなく、職業世界へのスムーズな移行を可能とする社会的・職業的自立を支える教育、すなわち職業観形成及び職業選択能力や汎用的能力の育成であり、高度な職業能力を付与する高等教育機関への進学をも含めた、総合的なキャリア教育であり、その一つの方策が文部科学省の指定事業である「日本版デュアルシステム」である。 本研究は、「日本版デュアルシステム」の指定を受けた専門高校を中心として、本事業終了後2~3年目の詳細な検証を、学校、受入事業所、卒業生を対象とした調査を通して行い、その成果と課題を明らかにする。さらに、生徒の職業能力、職業観形成、ならびに汎用的能力の育成の視点から、「日本版デュアルシステム」などの職場実習を含む高校3カ年を通した職業教育カリキュラムの実態調査などを通して、職業系専門高校における総合的なキャリア教育の構築を目指すことを目的とする。 昨年度の調査において、本事業について多くの地域・学校が本事業の成果を認める一方、いくつかの理由により、やむなく縮小や休止・中止せざるを得ない状況が多くの地域・学校において認められた。事業を担当した特定の教員の多大な負担、生徒の保険費用や移動のための予算確保が困難、本事業を就職先確保の手段として考えている学校もあることから、実習先の事業所等の確保が困難、事業を担当した教員や校長の移動等に伴う校内体制の整備等が困難などが、それらの理由として明らかとなった。しかしその一方、本事業を中核として高大連携、地域産業の担い手育成などを組み入れた総合的な職業・キャリア教育を実施し、大きな成果をあげている学校等もあることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文部科学省の「日本版デュアルシステム」指定事業の終了後、担当の教員や校長の移動等に伴って事業を縮小したり、中止した地域・学校が多く見られ、情報の収集が思うように進められなかったとともに、個人情報の保護などの理由で受入事業所や卒業者の調査が思うようにできなかったため、当初の計画通りには調査研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は主に本事業を継続しているいくつかの学校を中心として、継続を可能とした理由等とともに、日本版デュアルシステムを中核として高大連携、地域産業の担い手育成などを組み入れ、大きな成果をあげている総合的な職業・キャリア教育を実施している学校等について重点的に調査を進める。 また、文部科学省の指定事業「日本版デュアルシステム」の試行以降、多くの地域の専門高校において同様の事業を導入する事例が増加していることから、昨年に引き続いて補足調査を行うとともに、近年、職業・キャリア教育としてデュアルシステムを導入し、その成果の検証を行っている中国、韓国、台湾並びにアメリカ合衆国に関する情報についても収集・分析を行い、韓国とアメリカ合衆国については訪問調査や当地の研究者との研究協議も検討する。 本年度は本研究の3年目(最終年度)であり、以上のような計画で調査研究を実施し、これまでの調査結果等を分析し最終報告書を作成する。
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