本研究は、「日本版デュアルシステム」の指定を受けた専門高校を中心として、本事業終了後2~3年目の詳細な検証を、学校、受入事業所、卒業生を対象とした調査を通して行い、その成果と課題を明らかにする。さらに、生徒の職業能力、職業観形成、ならびに汎用的能力の育成の視点から、「日本版デュアルシステム」などの職場実習を含む高校3カ年を通した職業教育カリキュラムの実態調査などを通して、職業系専門高校における総合的なキャリア教育の構築を目指すことを目的とする。 本研究の結果、「日本版デュアルシステム」の指定を受けた多くの地域・学校において、生徒のキャリア形成や職業・進路選択に本事業の成果が認められた。しかし、やむなく縮小や休止・中止せざるを得ない状況も多くの地域・学校において認められた。事業を担当した特定の教員の多大な負担、生徒の保険費用や移動のための予算確保の難しさ、本事業を就職先確保の手段として考えている学校もあることから、実習先の事業所等の確保の難しさ、事業を担当した教員や校長の移動等に伴う校内体制の整備等の難しさなどがそれらの理由として明らかとなった。一方、指定地域や学校の中には、本事業を縮小したものの、中核事業として高大連携、地域産業の担い手育成などを組み入れたカリキュラム改革を行い、単に生徒の専門技術の向上のみならず、高等教育機関への進路意識の醸成など伴った総合的な職業・キャリア教育を実施して大きな成果を上げている学校等もあることが認められた。 また、本事業の推進は、地方自治体による単独事業としてのデュアルシステム導入を促すなど、一定の役割を果たしたと評価できるが、専門高校における職業・キャリア教育のさらなる発展を図る上で、「日本版デュアルシステム」を教育課程上に位置づけるなどの施策も今後の課題であろう。
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