第三年次はこれまでの研究関心を維持しつつ、戦後の教科外活動に多大な貢献を果たした教育学者、宮坂哲文に注目し、検討した。得られた主な研究成果は、次の2点である。 まず、宮坂哲文の父、宮坂喆宗 (てっしゅう) に注目する必要性を指摘した。喆宗は禅僧として知られていたが、学校教育との関わりは詳細が不明だった。そこで主に公刊資料を渉猟したところ、3点の著作、および20件以上の記事類を発見した。これらは禅に加え、成蹊学園や「錬成」に関する内容も、豊富に含んでいた。喆宗の履歴および著述活動については、学会発表1件、学術論文1件として公にした。この成果から、哲文の教科外活動の研究過程には喆宗の影響がありうるという、新たな仮説を提起できる。 次に、3年間の研究成果の一端として、『日高一二三、日高乾峰、木宮乾峰文献目録』を作成した。第一年次、第二年次の研究成果として既述した通り、三者が同一人物であると確認できた。そこで三者の名義による著書等30件超、および雑誌記事類140件以上について、できるかぎり著作物を確認しつつ、書誌情報を整理した。戦中から戦後にかけての教科外活動・特別活動の歴史を検討する際、基礎的な研究資料として、活用が期待される。 本研究課題の3カ年の成果は、次の通り公開された:①国内外の学術学会での研究発表、②国内の大学図書館および研究者への成果報告書送付(計約80件)、③国内外の学術雑誌等への掲載論文(うち7件は査読有)。さらに、研究の過程で入手した希少な雑誌類を、筑波大学中央図書館に寄贈することにより、研究情報の充実や公開に努めた。
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