研究概要 |
昨年度実施したアンケートをもとに、地域に残る口承文化の教材化の在り方について、これまでに行われてきた教育実践等を再検討する作業をおこなった。これまで、社会科では地名や祭りにまつわる伝承が、国語では地域に残ることわざや昔話が、理科では観天望気などの気象にかかわることわざのようなものが取り上げられていることが、あらためて確認された。しかし、文献資料等に残る長野県内でかつて語られていた農事にまつわる口承等については、ほとんど取り上げられていないということも少しずつではあるがわかってきた。そこで、これまでに地域の教育資源を長野県内に残る口承文化について、どのようなものがあるのかについて、文献等に残されているものについての洗い出しの作業を開始した。特に東日本大震災後、開発が急務とされた防災教育視点からは、口承が語る先人の知恵による「命を守る」一人一人の行動のあり方は、再度見直すべき内容として強調していくべきであることが明らかになった。また、新学習指導要領版の教科書分析も含めて、教科指導での扱い方の具現化と、研修のあり方も含めた情報を蓄積については、3年次に実験的に指導計画や研修教材を作成し、実際に実証してみることで、現職教員の指針になるようなものを開発することが有効であることが明らかになってきた。同時に、地域ごとの素材を細かくピックアップすることより、どのようにして教材化していくのかというと視点をより明確に示すことの方が、現実的な授業改善に結びつくという過程に至り、地域の素材等については、今後開発する学習素材データベースに、現場の教員が発掘したり,実践したりしたものを登録してもらう仕組み作りを開発して周知することとした。なお、22年度の調査結果については、信州大学全学教育機構の「人文科学G.E.プロジェクト~「環境・人・生活」への人文科学的アプローチ~報告書」に「地域の文化を活用した環境教育~口承文化の活用を探る~」として掲載した。
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