四日市市南部の内部川沿いに異なる中心的な栽培作物の連続する農業地帯(水沢(お茶)・小山田(米)・内部(トマト等)・河原田(みかん))において、今年度は、みかん栽培が盛んな河原田地区の60代以上の高年層に焦点を当て、生活語彙に関する方言調査を実施した。本調査の調査項目は「①遊びに関する語彙②農業に関する語彙③動作に関する語彙④性向語彙(「ずるい」や「うらやましい」等の言い方)⑤動植物の語彙」の計94項目である。予備調査、本調査の全項目の音声とハイビジョン画像とを収録した。まず24年6月13日にはこれまでの日本言語地図調査、民俗言語学的な先行研究を確認後、当地の60代以上の方4名(みかん農家含)を対象に予備調査を実施した。みかん栽培に関連した語彙(あぶらむし・みかんをつつむ防寒用のわらの言い方等)や農作業に関連した動作(カナゲル(くくる)等)の項目を新たに本調査の項目に追加し、後者の動作語形については、それらの表す意味範囲の特定を目指した。又これまで水沢~小山田間の調査でも、確認してきたコジル(すねて反対する)等の性向語彙項目の中では今回の予備調査で確認された「ずるい」の意味を表す複数の語形(コスイ・ハシカイ・ササコイ)に焦点を当て本調査項目に追加し、それらの語形間における意味範囲の解明等を目指した。次に本調査は24年8月20日と22日の両日、河原田地区全6地区から、各2名(男女各1名ずつ)の60代以上の高年層計12名を対象に実施した。上記の調査結果をビデオ教材・言語地図教材化し、25年2月19日に河原田小学校5年生2クラスを対象に三重大学生による授業を実施。その後の反省会では先生方や地域の方からアドバイスを頂いた。25年3月28日には方言調査結果報告会を開催し河原田地区の方と今後の地域のあり方を含めて議論を深め、一連の取り組みの中心的な内容は研究成果報告書にまとめた。
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