研究概要 |
教員養成での野外調査実習は,地域事象を把握する技術(技能)の育成にとどまり,技術(技能)を活かしたカリキュラム開発力育成は視野にない。2006年度よりフィールドワークの成果を踏まえた院生による副読本づくりを試みた結果,地域教材開発力養成に効果的なことが分かった。だが,副読本作成は多大な労力を要し,他教員養成機関で行いうるシステム化もできていない。本研究では,今後実践が求められるESD授業開発も組み込み,副読本作成の易行化を図る中で得た知見から,地域教材開発力養成のシステム化を図る。平成22年度研究実績に,次の点が挙げる。 1.ESD授業開発の知見を得ることに努め,ESD授業開発では,A.環境,社会・文化,経済の3視点から,B.当事者の立場に立ち,C.合意形成を図る授業づくりが有効であることが分かった(伊藤他2010)。また,平成20年度学習指導要領でESDに関わる学習内容を教科教育として提示したことを踏まえ,かつてユネスコ協同学校が取組んだ「国際理解と国際協力のための教育」を検討し,分化社会科の学習内容をどのように統合化するかという研究課題を抽出した(高田他2011)。 2.顕著なESDの素材がある地域の副読本を収集した(豊富な湧水の熊本,水俣病ともやい直しの水俣,釜山と交流のある福岡,観光都市別府,文化財や歴史的建造物のある中津,宇佐航空隊の遺産がある宇佐,広域合併で政令指定都市となった静岡,ベッドタウンの四街道)。収集した副読本では,学習指導要領と関わらないESDの素材は採用されない傾向があった。また,愛知県の副読本の利用や作成に関わる調査も行い,分析中である。 3.2006年度より試みてきた副読本開発活動を省察し,「カリキュラムや授業をナラティブとして創り出す」(ペンティ・ハッカライネン2010)という地域教材やカリキュラムの開発手法の知見を得ることが出来た。
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