研究概要 |
教員養成での野外調査実習は,地域事象を把握する技能の育成に終始し技能を活かしたカリキュラム開発力の育成は視野にない。2006年度より実施するフィールドワークの成果を踏まえた院生による副読本開発を試みは,地域教材開発力養成に効果があった。だが,多大な労力を要し,他の養成機関で行いうるシステム化もできていない。本研究は,ESD授業開発と関連させた副読本開発を試み,その易行化を図る中で得た知見から,地域教材開発力養成のシステム化を図ることを最終の目的とする。2011年度は,大学院生による社会科副読本(ESD用地域副読本)づくりを主な目的として研究を開始した。2011年度の研究実績は以下の通りである。 1.社会科副読本(ESD用地域副読本)開発経験を持つ教職者の省察を日本教育大学協会研究集会で発表した。副読本開発経験が地域教材開発力の形成に資すること,教員養成方略として副読本開発の有効性が改めて明らかとなった。 2.小学校社会科用副読本の作成・利用状況の分析結果を日本地理教育学会等で発表した。副読本は地域教科としての利用度が高かった。作成側は「学習活動の展開の参考にする」よう求めるが,地域観察を十分させられないために副読本を読んで話し合う利用側の国語科的社会科の問題が明らかとなった。広域合併との関わりでは,作成側が子どもに新市町村への愛着や一体感を持たせることを編集方針とし,利用側もこの点を広域合併に関わる最大の問題とするが,教員自ら合併他市町村へ出かけて学ぶ姿勢の無さが問題として挙げられた。 3.2の問題は,地域教材開発力の形成に関わる問題である。そこで,1の成果も踏まえ,香川大学と愛知教育大学の大学院生による協同の社会科副読本(ESD用地域副読本『水・土・里のパイオニア』)づくりを行った。 4.研究初年度である2010年度に得た「カリキュラムや授業をナラティブとして創り出す」という地域教材及びカリキュラム開発手法に関わる知見をより深めるため,従来の「物語り」を活用した授業実践を検討し,授業で「物語り」を活用する際の基礎的知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.2006年度から開発している大学院生による副読本開発のプロセスを分析し,どのような地域調査技法が必要となるか明らかにする。 2.1で明らかにした技法を活用して,どのように副読本が開発されていったか明らかにする。 3,大学院生を指導して2011年度開発した副読本を活用した授業開発を行い,研究協力校で授業実践を試みる。 4.3の授業実践の逐語記録を作成し,授業分析を行い,大学院生による副読本開発の効果を検証する。
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