本研究は、英国の初等・中等学校における人格・価値教育の実施状況を、〈市民性〉〈社会性〉〈宗教性〉というキーワードによって考察するものである。英国の学校においてはシティズンシップ教育、PSHE(Personal Social Health Education)、宗教教育が、それぞれ独自性と共通性を持ちつつ展開されているが、それらがどのような政策と指針によって示され、また実際の学校において、教師たちによってどのように翻訳され、実践されているかを、三者の連携という観点から解明するものである。 研究の最終年度である24年度は、これまでの研究をまとめるために、現地でのフォローアップ調査を行うとともに、現在方向性が定まりつつあるイギリスの現連立政権下におけるカリキュラム政策の行方と、それらが人格・価値教育の在り方にどのような影響をあたえるかについて、文献調査をおこなった。なお24年度からは、教育心理学を専門とする藤森千尋(現埼玉医科大学専任講師)が研究協力者として加わり、実地観察の研究体制を強化した。現地におけるフォローアップ調査は、平成24年10月に英国に出張し、これまでの調査で不足していた部分を補うことが出来た。 これらの成果の一部は日本道徳教育学会、全国大学国語教育学会で発表するとともに、研究報告書、論文、一般書籍にまとめた。 当初は平成24年度内に冊子にした本研究の調査報告書をまとめる予定であったが、現政権のナショナル・カリキュラムの方針の発表が遅れ、最終的なナショナルカリキュラム案が提出されたのは、翌平成25年9月であった。そこで平成25年度にこれらの分析と、その後の各界からの反響や引き続き実施される公開協議の結果等を踏まえたうえで、最終まとめとしての調査報告書を作成した。また、研究成果の一部を日本道徳教育学会、日本読書学会において発表するとともに論文にまとめた。
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