薬学6年制では、チーム医療の担い手として高度な専門性を持つ薬剤師の養成が求められている。しかし、精神科領域については、薬学教育モデル・コアカリキュラムにおいてもわずかな記載にとどまり、実務実習も組み込まれていない。本研究では、精神疾患の正確な症状や治療法に関する知識の修得のためのカリキュラムを作成することを目的とした。2011年にはニコチン依存症患者への認知行動療法と動機付け面接法を用いた専門性の高い禁煙指導のカリキュラムを構築し報告した。また、2009年4月から薬学部5年生に対し、精神疾患の基礎、バーチャルハルシネーション(統合失調症の幻聴の疑似体験ができるソフト)体験、薬物療法、薬物療法の評価方法(DVDを利用)、副作用の評価方法(DIEPSS)、認知行動療法に基づく服薬自己管理モジュールなどの90分10コマのカリキュラムを構築した。これらのカリキュラム実施により学生の精神疾患への偏見・差別の意識の変容が図れたか、また、服薬指導に対する不安の解消につながったかなどに関する調査を終了し、カリキュラムの有用性が明らかとなった。また、薬学6年制に伴う、長期実務実習中に薬学生が示す心理的ストレス(POMS)および自己効力感の関連について調査し論文化した。さらに、1年生に対して薬物乱用は依存が背景にある精神疾患であるため、薬物乱用防止教育の構築も行い有用性が確認されている。 以上、高度の専門性をもって精神科チーム医療へ参画できる薬剤師の養成は社会的意義が極めて高いものである。
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