就学前施設や小学校において、教師と子ども、あるいは子ども同士の儀礼的コミュニケーション(授業中に自分で意見を言いたい子どもが「意見を言ってもいいですか」と皆に問いかけると皆が「いいです」と唱和することが定型化されている、あるいは指名を生徒間で行う際に「○○さん、どうぞ」と言うと「ありがとう」と答えることが定型化されている、など)や劇活動が、クラスのメンバーの善い関係の形成に重要な役割を担っているという仮説のもとに、幼稚園と小学校でエスノグラフィーを行った。 幼稚園では、集会時にリズミカルな言葉の繰り返しを多く含む絵本を読み聞かせたり、手遊びを行うことによってそれを子どもたちが次第に覚え、集会時に自発的に行うようになり、さらに集会時以外にも自発的に行うようになっていった、その際に必ずと言ってよいほどその言葉や動きを他の子どもと共有し、子どもたが自分たちで「群れる」姿が頻繁に見られるようになった。このように、子ども同士の身体が同調する姿が見られる頻度が高まることが集会時のクラスのまとまり感を形成していると解釈される。 小学校では、フィールドとなった本庄クラスでは、集会時あるいは授業中の儀礼的言動が教師のモデルや前年度も本庄クラスだった子どもの言動がモデルとなることによって、他の子どもたちが授業という劇空間でのふるまい(儀礼的コミュニケーション)に習熟していく姿が観察され、その言動がいつも観察されるようになるにつれて、子どもたちの休み時間の距離感が縮まり(身体的接触度が高い)、親近感を増していく様子が観察された。また、3学期に行う劇活動では、子どもたちが自発的に知的探求を深めていく姿が観察された。すなわち、儀礼的コミュニケーションによって深められた身体の同調が、知的探求へと繋がることが推測された。
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