今年度は3年間に亘る研究の初年度にあたり、教育実践事例収集を中心に研究を実施した。「優れた」小学校キャリア教育プログラムの「優れた」を明確にするため、全国4つの小学校の実践事例を報告・分析するとともに、都内の5つの小学校における「優れた」キャリア教育実践の研究に携った。そのうち4校は小中連携においてキャリア教育の実践に取り組んでいた。こうした実践研究では、発達段階に即したプログラム開発において能力や態度の育成が実践にどのように反映しているかに焦点をあて実践事例の整理にあたった。「優れた」実践とは、学校の教育課題と直結した実践に多く見られることから、教育課題を明確にしながら「優れた」キャリア教育を推進している実践者やそうした活動を支援するNPOや教育コーディネーターを招き、3回のシンポジウムを開催し、「優れた」キャリア教育について、その要件や周囲からの支援についての多くの見解を得た。また、学校改革とキャリア教育との原初的関係性を歴史的に辿るため大正期の小学校実践についてまとめた。さらに、わが国の「優れた」キャリア教育研究に当たり、国際比較の観点も取り入れた。ひとつは、韓国で行われた国際学会での講演である。わが国のキャリア教育の「優れた」実践を紹介し、諸外国の研究者や実践者の批判を仰いだ。もうひとつは米国ケンタッキー州、カリフォルニア州のキャリア教育について訪問調査である。現在米国で拡大するキャリア・テクニカル教育の実態を視察調査し、特に小学校の優れたキャリア教育プログラム「Engineering is Elementary」について授業を見学するなど研究調査を進めた。米国の調査研究は、キャリア教育の組織、キャリア発達促進のための資源、職業とのつながり、学力向上への取り組みの4つの観点で行なわれた。諸外国における知見は、「優れた」の意義を多角的に捉える上で非常に有効であった。
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