サービス・ラーニング(以下SL)等の社会奉仕体験活動は、貢献を前提として成立するものであり、それが持続的に展開され、かつ教育効果を生むためには、学校と地域との互恵関係が鍵となる。そこで本研究では、受け入れ先となってきた地域の諸機関等に対して、送り手の学校側が1.地域に与えた影響を調査・評価すること(インパクト調査)の意義についてどのように捉えているのか、2.これまでどのようなことを行ってきたのか3.今後はどのようにあるべきと考えているのかをリサーチクエスチョンとして掲げ、SLを先進的かつ組織的に行っている国内の6大学ならびに米国インディアナ・パーデュ大学への調査を行った。 国内の大学では現在までのところ、定型的な形でのインパクト調査は行われておらず、学生のラーニングに重点が置かれている。その理由として1.一定年限の活動で捉えることの困難や長期的な調査の必要2.第三者評価の必要3.調査対象(受け入れ先)の負担4.広範な調査対象の存在などが挙げられた。一方で各大学とも調査の必要を認識しており、実際には学生の貢献状況を学生のラーニング評価やパフォーマンス評価を通して確認したり、地域との良好な関係を構築するための取り組み(交流会など)を行ったりしていることが明らかになった。SLを実施していく過程で制度としてのインパクト調査の必要性を感じるようになった大学も少なくなかった。 インディアナ・パーデュ大学では、学内外から多様な形で資金提供を受けていることや地域貢献という大学のミッション遂行といった理由から、インパクト調査は必然のものと捉え、その特徴は、第三者評価の導入と大学独自の定期的な活動(毎年度)として行っているとろにあった。 本研究の今後の課題は、受け入れ先への調査を行い、日本において有益な送り手と受け入れ先の相互に資するインパクト調査の内容と方法を提案することである。
|