本研究では、学習指導要領の中学校段階における指導計画の配慮事項として、「ガイダンス機能」の充実が明文化されていることに着目する。しかし、「具体的に誰に対して、どういう方法で、どのような能力を育成するのか」については言及されていない。そこで、アメリカにおけるスクールカウンセリングや進路指導、あるいはWHO(世界保健機関)が提示するライフスキル教育などを参考にしながら、小学生高学年及び中学生段階を対象にしたガイダンスプログラムの開発に取り組んだ。また開発したガイダンスプログラムによる教育効果については、児童・生徒へのアンケート(心理検査、自由記述)をもとに、分析・検討を加えた。 JSPS「ひらめき☆ときめきサイエンス」において、「「絆」を求めて、「思いやり」のかたちを体感してみよう」を開催し、小学校高学年及び中学生を対象にして、開発したプログラムを用いた授業実践を行った。その際、学校教育現場の教員を対象に参加を呼びかけ、授業を進めるにあたり、適宜ファシリテーターの役割を交代するなどして、実際に活用することを見据えた研修の場としても効果的であった。 ガイダンスプログラムの開発にあたり、前年度の海外学校訪問調査(ドイツ:Nelson-Mandela-Oberschile校における「社会性の学習」、「学級会」の授業および「生徒協議会」の参観、Realschule am Oberen Schloss校における「学級会」および民主主義教育の実践状況に関わる聞き取り、Grundschule Sud Landau校における「児童会」の参観、「学級会」の授業、指導者への聞き取り、ほか)を通して得た資料を活用した。児童・生徒一人一人が、批判的な思考を抱きながら、授業や諸活動に能動的に取り組めるように、ドイツの教育実践から学び得た内容を、開発したプログラムに組み入れた。
|