平成22年度は計画に従い、「読書教育プログラムの」作成に関わる先行研究調査及び、2つの小学校と、筆者が勤務する環太平洋大学における教育イベントで「読書プログラム」試案の授業実践研究を行った。 先行研究調査では、物語と音楽、また地域連携の先駆的活動を行っている、ウィグモア・ホールWigmore Hall(ロンドン)での調査を行った。当ホールでは、様々な世代に向け、近隣の美術館や学校と連携したプログラムを展開しており、本研究におけるプログラム開発に具体的な示唆を与えるものとなった。 授業では「体感型読書」として絵本『スイミー』を用い、「音楽」と「物語」と「体験」を結びつけ子どもたちが互いに共感する心を育てる試みを行った。この試案では、(1)物語(『スイミ』一で固定)、(2)音楽、(3)ボディー・パーカッション、(4)言語活動、4つの要素によって構成される。基本的には、絵本をコンピューターに取り込み、パワーポイントで紙芝居のようにスクリーンに映しながら読み聞かせていく。物語の展開の中で、場面に応じた音楽を用い、大きな動きのある場面ではボディー・パーカッションでリズムを体験する。同様に、物語の中で登場人物の心が大きく動いている場面において、魚の形に切った紙片にそれぞれの魚の気持ちになって考えたことを表現する言語活動を行うというものである。 以上の研究から、23年度は学校の行事や、生活、道徳の時間などとの具体的な連携方法についてさらに進めたい。同時に、読書体験の一つひとつが自分のものとして子どもの心の中に場を得ていくために、物語を挟んで互いに向き合い会話し、思いを共有・共感しあう体験の在り方について検討する必要があると考えている。
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