本研究は当初より、個別な体験を共同体に共有されるために、音声言語以外にも様々な 手段を考え、研究が進められてきた。読み聞かせと組み合わされる手段として中心となったのは「音楽」である。「ももたろう」の物語の進行に合わせ、音楽(ボディーパーカッションや効果音の応用)を受けての囃子や踊りといった身体表現への発露を試み、物語を集団的な読み聞かせの場で共有する方法をとった。時にはコンピューター等の至極利便性の高い機械による音響や映像等の効果によって、読み聞かせによる有機的コミュニケーションとの融合も試みた実験は、共同体の体験を強化させられるか分析を行った。 本研究による手法は、多様な側面から人間の五感に働きかけるものであり、参加者を「受け手」の位置にとどまったままで終わらせない。物語は聞き手の内的世界に取り込まれ、各々において「再創造」される。「再創造」された新たな物語(解釈)は、物語受容の体験を共にした人々と共有することによって自覚化されるのである。 その中には、域の保育・幼稚園などといった子どもの日常生活の場、また図書館や美術館といった非日常的な場の双方での実践的研究を行い、共通する要素とアレンジを要する要素とを明らかにし、教育・文化施設における「体感型読書」の特性を生かすようにした。そこから、物語の再創造と共有のために骨組み(枠組み)を構築した。さらに、プログラムが実施される場ごとに必要なアレンジを分類し、地域の様々な場面において場に即した「体感型読書」のガイドラインと実践可能なサンプルを提示し、物語を体感するための具体的なシステムを構築を試みた。 このように研究最終年度となる本年は、新たな研究の新たな展開を見据え、プログラムの枠組みを確実に構築すること、またその成果を著作物にまとめることを計画。アンケート結果の推移、プログラム開発過程を開示すべく整理・まとめる作業を行った。
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