近年、日本では、学級不適応等により別室指導を取り入れている学校が少なくない。特に、高等学校では懲戒処分には当たらない 「特別指導」としての登校謹慎が行われている場合が少なくない。しかし、一時的な避難やクールダウン的な目的以外に、中長期的な視野に立って継続して別室指導をしていくためには、人員不足や指導プログラムの欠如などにより、そのシステムが必ずしも機能しているとは言い難い。本研究は、欧米諸国の公教育現場で積極的に活用されている「オルタナティブルーム」(通常の教室で授業を受けることができない児童生徒を対象にした教室)の日本化の可能性を探るとともに、主要課題を明らかにすることを目的とする。このことは、今後の日本の生徒指導にとって意義深いものである。 平成24年度の研究では、別室指導で効果を上げている国内外の学校等について、そのシステム及びプログラムに関する調査を行い、その効果面を分類できた。具体的には、効果を上げている学校の共通点として、ハード面では、①別室指導におけるマニュアルの存在、②別室指導を対象とする児童生徒の「個別支援カルテ」の活用、③個別の課題に応じた指導プログラムの作成、の3点が、そして、ソフト面では、①教師主導ではなく、「児童生徒に自分で考えさせる」実践、②個別ではあるが、あらゆる機会を通して、集団活動的要素を取り入れる実践、が挙げられる。 なお、日本では、別室指導を担当する教職員が固定されていない場合が少なくないことから、「個別指導カルテ」を用いた連携を円滑にするための連絡会議の充実が、その成否を分けていることにつながっていた。
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