本年度は、研究プロジェクト初年度にして且つ交付内定が10月末であったことから、実質約5ヶ月の研究期間となった。しかし、研究計画フェイズ1の先行研究レビューはほぼ終わることが出来た。このレビューにより、発達障害のある子どもの支援の基盤は「自己認知」であることが再認識され、自立へ向けた社会適応スキルの包括的支援が重要であること、また、本研究が目的としているビデオなどのテクノロジーを利用したセルフモニタリング支援手段が海外でも研究されるようになっている現状を把握できたことは、本研究の意義と妥当性が確認された。フェイズ2である包括的支援パッケージの構築への足がかりとして、ソーシャルナラティブ手法の一つであるパワーカードを、従来のトークンエコノミー、通常学級と特別支援教育学級の連携を組み合わせて発達障害のある小学生に実践した。研究計画で仮定されたように、単体の支援手法実施では得られない効果、特に社会的妥当性が包括的支援で高まることが示唆された。また、青年期の自閉症スペクトラム障害のある人々への就労支援におけるソーシャルスキルプログラムにセルフモニタリング、5段階表、SOCCSSといった自己認知および自己コントロールを組み入れることを模索している。従来の就労スキル支援のみでは効果の確認が困難であった、就労する本人の自己調整機能や達成度の自己認知にこれらの手法が大きく影響するであろうことは、先行研究からも十分期待できる。今後も研究計画通りに進めていく予定であるが、本研究テーマが発達障害のある子どもたちの社会的自立に直結することから、対象者を児童生徒のみならず、青年期へも広げて研究を展開させていきたい。
|