研究課題/領域番号 |
22531048
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
萩原 拓 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00431388)
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キーワード | 発達障害 / ソーシャルスキル / 自閉症スペクトラム障害 |
研究概要 |
前年度からの試行結果をふまえて、従来のお話形式の教材を使っての支援より、5段階表やSOCCSSなど当事者と支援者が一緒に支援を組み立てていく支援手段を中心にフィールドでの実践を行った。本年度の代表的な実践研究として、高機能自閉症スペクトラム障害のある児童・青年のための4泊5日のキャンプにおいて、6名の小中学生を対象に「不安のコントロール」を目指したセッションを包括的支援パッケージの形で行った。自閉症スペクトラム障害のある人々の多くが抱える不安は、かれらの持つ社会的行動の困難性に起因するものが多い。そこで本セッションでは、当事者個人の不安に至る経緯を整理することから始め、低レベルから高レベルまでの不安について5段階表を利用して具体的に記入していった。その後、なるべく低い不安レベルでの解決法を支援者と考えていった。ここで重要視したのは、「自分で自分の不安に気づく事が出来る」自己認知であり、「なるべく自分で解決できる」自己コントロールのやり方である。参加者全員が客観的に自分の姿を思い描く事が出来なかったため、セッション中は参加者が不快にならない程度にiPadを用いて自分の姿を見るように促した。短期間で顕著な数値データは取得できなかったが、参加前よりも自分の事がよくわかるようになり、学校でも自己コントロールをやってみたいというフィードバックが得られた。本セッションでは短期間の集中支援だけではなく、その後の支援も考慮した。このセッションで使用した教材、参加者個人の映像や成果、さらにセッション期間の観察をふまえた今後の指導の手引きを、各参加者用にDVDを作成し、セッション終了後に保護者および教員(支援員)に配布した。(1)教材・ツール開発、(2)支援および記録、(3)個人の生活・学校環境の支援のためのDVD作成・配布、という支援パッケージが本年度の実践を通して明確化してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年度は11月からの開始であったが、第2年度終了時点では顕薯な計画的遅れは見られていない。自閉症スペクトラム障害の社会的困難性については、量的分析が難しいため、質的データも取り入れた評価を今後ともしなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のまとめとして、フィールドで教師等の支援者が支援パッケージを実践できるよう、支援者研修コースの枠組みを作成する。研修は演習を交えたセミナー形式を想定している。また、包括的支援パッケージを中心とした、アセスメント、教育・就労支援計画作成、支援実施およびモニタリングなどの一連の支援手法をまとめた本の執筆も計画している。
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