研究概要 |
前年度の研究では、弱視者の障害開示が,開示手段及び開示場面によって影響されることが明らかとなった。そこで,このような異なる開示効果が,健常学生の支援意識にどのような働きかけをするのかという特徴を解明するため,開示内容への認知(以後,認知)→弱視学生への評価(以後,評価)→健常学生の支援関連自己効力感(以後,自己効力感)という潜在変数の流れを示す仮説モデルを立て,開示手段別に,障害開示が健常学生の支援意識過程に及ぼす効果のメカニズムを共分散構造分析により検討した。 手続きとしては,404名の女子学生を対象に初対面の男子弱視学生からの障害開示の提示方法のうち,映像(対面開示)か文章(非対面開示)かの一方を参加者に示し,質問紙への回答を求めた(対面開示群198名,非対面開示群206名)。その結果,対面開示では,認知が評価を媒介して自己効力感に間接効果を及ぼしており,仮説モデルが支持された。これに対し,非対面開示では,評価に不適解がみられ,仮説モデルは支持されなかった。そこで, 評価については観測変数を用いて分析した結果,認知は尊敬と自己効力感のそれぞれに対し,直接効果を及ぼしていた。これらのことから,評価が自己効力感に影響を及ぼすためには,対面開示のように,健常学生に具体的な弱視学生像を想起させることが重要であると示唆された。この点は,具体像が想起しにくい非対面開示において,評価が自己効力感に影響していないことからも支持される。 一方,認知が自己効力感を高めるためには,いずれの開示手段においても,障害開示は肯定的に認知されることが重要であると確認された。 以上,本研究により,弱視学生が障害開示を効果的に活用するためには,肯定的に認知される開示内容を 示すだけではなく,弱視学生の具体像を示すことが重要であることが明らかとなった。
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